ある日、桃太郎は鬼ヶ島へ鬼退治を命じられた。
「鬼退治か~、やっぱ一人で乗り込むのは無謀だよな? 戦力が必要だわ」
旅立ちの朝、ばあさんが持たせてくれた団子を見つめる。
「これで仲間を集めるんだよ」と、ばあさんは優しく微笑んだ。
だがしかし、団子なんかで命を張ってくれる奇特なやつなんているのか?
桃太郎は足を止め少し考えた。──物は言いようだ。
「この団子、食べたら鬼ヶ島ツアーに連れてってやるぞ~」
すると──
「ワン!」
草むらから犬が飛び出してきた。
「その話、詳しく聞かせてもらおうか?」
桃太郎は団子をひとつ差し出すと、犬は鼻を鳴らしてペロリと食べた。
「こいつはすごい……体の奥から力が湧いてくるぞ!」
「本当か!?」
今度は木の上から猿が降りてきた。
「じゃあ俺も試すぜ!」
団子を食べた猿は、驚いた顔で腕を回し、ぴょんぴょんとその場で飛び跳ねた。
「やべえ、ジャンプ力がめっちゃ上がったわ!!」
「そんなバカな……」
頭上で声がしたかと思うと、キジが羽ばたいて降りてきた。
「私にもちょーだい!」
団子を食べたキジは、翼を広げ目を輝かせた。
「飛行速度が上がったわ! テンションもあっがる~♪」
桃太郎は腕を組み、満足げに頷いた。
「なるほど……これはただの団子じゃないな。仲間を強くする『バフ団子』ってわけか」
かくして最強のパーティーがここに誕生した。
──そして鬼ヶ島。
鬼たちは悠々と酒を飲んでいた。そんな中、突如として『強化された動物軍団』が襲来する。
犬は猛スピードで大地を駆け回り、猿は異常なジャンプ力で鬼の顔面に飛び蹴りをかます。そして、キジは鬼の頭上を爆速で飛び回った。
「なんだこの化け物たちはぁぁ!!?」
逃げ惑う鬼たちを背景に、桃太郎は冷静に戦況を見極める。
「てか、犬とキジなんもやってなくね!?」
──戦闘開始から数分の出来事だった。鬼たちは、『バフ猿』の前に成す術もなく白旗を上げた。
こうして、桃太郎はいとも簡単に鬼ヶ島を制圧してしまった。
後に、きび団子系男子として語り継がれるのであった。

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