雨の導き~必然の奇跡~

ショートショート集(スキマ小説)

天気予報は晴れだった。しかし、空は容赦なく灰色に染まりぽつぽつと雨が降り始める。

「またか……」

光輝はため息をついた。自他ともに認める雨男で、彼が出かける日は決まって雨だった。

そんな彼が初めての街コンに参加した。友人に半ば強引に誘われたのだが、案の定会場へ向かう途中で雨が降り始めた。

会場のカフェに入ると濡れた髪をハンカチで拭う。「 なんでいつも……」光輝がボソッとつぶやく。

「あの、もしかして……」

同じように髪を拭っていた女性が恥ずかしそうに微笑む。

「……あなたも雨、降らせました?」

光輝は驚いて目を瞬かせた。

「え、もしかして……雨女?」

「はい。今日も予報は晴れだったのに……私が出かけるといつもこうで」

二人は顔を見合わせ同時に吹き出した。

「じゃあ、これは俺たちのせいってことで」

「ですね!責任、とりましょうか?」

彼女──美空(みそら)は、そっと手を差し出した。

光輝は静かにその手を握る。

不思議なことに、その瞬間、雨がやんだ。

「……あれ?」

「まさか……?」

外を見ると雲の切れ間からやわらかな陽が差し込んでいる。

「もしかして、二人一緒なら雨はやむのかも?」

「だったら試してみる?」

雨男と雨女が出会った日、ふたりの空には虹がかかった。

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