──目が覚める。
天井を見上げ、息を整える。妙な夢だった。あまりにもリアルで、まるで本当に体験したかのような感覚が残っている。時計を見ると朝の6時30分。いつも通りの時間だ。
「変な夢だったな……」
呟きながらベッドを出る。カーテンを開けると眩しい朝日が差し込んできた。キッチンに向かい、コーヒーメーカーのスイッチを押す。立ち上る香ばしい香り、ようやく意識をはっきりさせてくれる。──はずだった。
「……?」
どこか違和感がある。何かが足りない。いや、余計なものがある?
リビングの椅子に腰を下ろし、しばらく考える。しかし何がおかしいのかはっきりしない。
ふとテーブルの上の新聞に目をやる。日付を見ると──2023年?
「え?……今は2025年のはず」
慌ててスマホを確認する。しかしロック画面には「2023年2月18日」と表示されていた。こんなことがあるはずがない。悪い予感が胸をよぎる。
──もしかしてまだ夢の中なのか?
そんなバカな。さっき起きたばかりだ。これは現実のはず──
ピピピッ!
アラーム音が響く。
──目が覚めた。
ベッドの上だった。息が荒い。夢だったのか?そうか、2023年に戻るなんておかしいもんな。時計を見ると6時30分。カーテンを開けキッチンへ向かう。
「……」
コーヒーメーカーのスイッチを押し、立ち上る香りを吸い込む。安心する。──はずだった。
しかし、テーブルの上の新聞の日付が2023年になっている。
「またか……」
周囲を見回す。違和感が増していた。
キッチンの壁にかかったカレンダー。先週、確かに書き込んだ予定が跡形もなく消えている。
時計の秒針が同じ位置を行ったり来たりしている。
背後に視線を感じ、ふと振り向く。しかし誰もいない。
──ピピピッ!
目が覚めた。
今度こそ現実か? 震える手でスマホを掴む。日付を見ると2023年2月15日。
「嘘だろ……」
壁に掛けられた家族写真。昨日までのものと違う。見慣れた自分の顔の隣、見知らぬ男が写っている。
リビングの時計の針が動いていない。
カーテンを開けると、いつも見えるはずの向かいの家が消えている。
──これは本当に夢なのか? それとももう戻れない現実なのか?
次のアラームが鳴るのをただ待つしかないのか……?
いや待て。
──この写真の男、どこかで見たことがある。
じっと見つめていると、頭の奥で何かがざわめく。記憶の底に沈んでいたものが、ゆっくりと浮かび上がるような感覚──
知っている。俺はこの男を知っている。
──ピピピッ!
アラームが鳴った。
目が覚める。
天井を見上げる。息を整える。
そして俺はようやく気づいた。
──これは、俺の体じゃない。
関連記事・派生記事リンク

サクッと読める!ショートショート集!スキマ時間にどうぞ(●ˇ∀ˇ●)