とある人気バーガー店では、放課後いつものように学生でにぎわっていた。
「やばっ、これ見て!」
テーブルにスマホが置かれる。画面の中では乾いた大地を一頭のシマウマが必死に逃げていた。脚に傷を負ったらしく、足取りがやや鈍い。そのすぐ背後から、しなやかな体つきのライオンが容赦なく距離を縮めていく。
「え、やばくない?」「こんなん恐怖だな……」「でも、これが自然の摂理ってやつでしょ?」
そう言いながらも、誰もが手を止めることなく目の前のハンバーガーを頬張る。
柔らかなバンズに歯を沈めると、焼きたての肉から熱い肉汁がじゅわりとあふれ出す。噛みしめるたびに肉の繊維が舌の上でほどけ、ジューシーな旨味が口いっぱいに広がった。
「やっぱ、ここのバーガー最強!」
スマホの中、ライオンの牙がシマウマの喉元に食い込む。画面が揺れ、砂埃が舞うとすぐに他のライオンたちがシマウマに群がった。
「かわいそう……」「エグいな……」
「てか、食事中に見るもんじゃなくね!?」
それでも口は止まらない。バーガーにかぶりつき、コーラで流し込む。
「ごちそうさまー」
──スマホの画面ではライオンが血に濡れた口を上げる。満たされた表情と共に。

ショートショート集(スキマ小説)
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