パワーストーン~見えない力~

ショートショート集(スキマ小説)

ふと香澄が身につけているネックレスに目が留まった。金色にも見えるイエローの石がキラリと光り、それはまるで別世界から来たかのように輝いていた──私は思わず尋ねる。

「それどこで買ったの?」

香澄はニコニコと『ネット通販』と答え、石を手に取りじっと見つめた。「これを身につけると、自信がみなぎって幸せになれるのよ!」と、はつらつとした笑顔で続ける。

「パワーストーンってやつ?」

「そうよ、もしかして理子も欲しくなった?」

香澄が楽しげに振り向く。──少し考えて私は頷いた。

すると、「見てみて!」と香澄は嬉しそうにスマホを取り出し、それを買ったであろう通販サイトを見せてきた。しかし、そのサイトの雰囲気はどこか怪しく感じる。ページいっぱいにキラキラしたフォントの派手な宣伝文句が並んでいたのだ。

『人生が変わる奇跡の力』『お金持ち続出!』『恋愛運100%アップ!』

あまりの胡散臭さに思わず眉をひそめた。「本当にここで買ったの?」

そう尋ねると、無邪気に「そうだよ!」と言ってまた石を手に取る。その様子から彼女が何の疑いもなくこの石の力を信じていることを実感し、私は心の声を押し殺した。

「せっかくだし、お揃いにしようよ!」

香澄の誘いに私は余計なことを言ったなと後悔する。そして、半ば押し切られる形で同じペンダントを購入することになった。

──それから数日後、届いた小さな箱を手に取ると香澄の笑顔がふと頭に浮かぶ。本当に効果があるのだろうか?いや、これで幸せになれるならだれも苦労しないだろう。

箱を開けると中の石がキラリと輝いた。身に着けてみたものの、やはり特に変化は感じられない。自信がみなぎるわけでもなく、運が良くなる気配もない。ただの綺麗な石にしか思えなかった。

その後、香澄と再び会ったとき私は正直に話した。

「香澄、正直に言うとあんまり効果を感じないんだよね……」

すると、香澄は残念そうに「そっかー」と言いながらも、「私は、いっぱいいいことあったんだけどなー」と、すぐに満面の笑顔に戻った。

そのとき、私はふと気づいた。

香澄はこの石を疑うことなく信じている。それが彼女にとって最大の力になり、石の存在を特別なものにしているのではないかと。そしてそっと石に触れた。

信じることで何かが変わるのかもしれない──いや、石はただのきっかけだ。そう思うと急に体から力がみなぎるのを感じた。

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